体を売り本を買う。
夜はどこまでいっても黒で、黒に生きれば煤けていく。
1日。
たった1日で何人もの諭吉がわたしのもとに入ってくる。一週間はなにもしなくていい、生きる意味も力も無いのでズブズブと沈んでいく。
「それじゃあ脱いで」と黒が泥だらけの手で弄る、シャワーじゃ落としきれないその黒いぬるっと生温かい一物。
きっとこの黒の根はお金と呼ばれるものだ。田畑を耕さなくてもお米が食べれるし、鶏の首をひねらなくても唐揚げが食べられる。
わたしは一週間分の本を買う。
幾人の手をまわって辿り着いたであろう古本屋で売られている本はまるでわたしのようだ。ところどころ破れているし、黄ばんでいる。
新書を買うお金はない。新書を買うと月曜日が早く来る。黄ばんだり破れたりする回数は少ないほうが良いにきまっている。
心も身体もすり減らして、駅に向かう人と逆に歩きながら、嗚咽する。
「いつまでつづくんだろう」
彼にはインターネットのしごとと嘘を吐いている。別に隠すつもりはないのに、ずるずると3年。3年でわたしはどれだけ泥だらけになっただろう。
本を読むと現実が遠ざかる。とってもハッピーな結末を迎えた主人公は来世のわたしだ、きっと来世のわたしは紆余曲折して王子様と幸せに暮らす。
電話が鳴る。
たった1日に行かなかったからだろう。
汚れたわたしを終わりにしようと、わたしはきめた。きっかけは本当に些細、笑っちゃうぐらい。「なんでこんなことしてるの?」そう言われて初めて気づく、なんのためでもないことに。
黒は消えない。消えないけど、消えないことをあのひとにもちゃんと伝えて、それからのわたしはそれから考えることにしよう。
鼓動が高鳴る。
たった一言伝えるだけなのに。